ソウル旅行で「北村(プッチョン)」という名前を一度も聞かずに帰る人は、今ではほとんどいないかもしれません。景福宮と昌徳宮の間に広がる北村韓屋村は、韓国の伝統家屋である韓屋が今も残る、ソウルを代表する観光地です。石垣の続く坂道、瓦屋根が重なって見える路地、木の門と小さな庭。写真を撮りたくなる風景が次々に現れるため、日本から訪れる旅行者にもよく知られています。けれども、北村を歩いたことがある人に「北村で何を見ましたか」と尋ねると、多くの人が韓屋の並ぶ有名な坂道や展望スポットを挙げます。もちろん、それらは北村らしさを感じられる美しい場所です。しかし、北村の魅力は一枚の写真に収まる風景だけではありません。大通りから少し外れ、人の流れが細くなる路地へ入ると、観光案内の地図だけでは気づきにくい、もう一つの北村が見えてきます。扉の向こうで木を削る音が聞こえ、窓辺には小さな工芸品が並び、古い韓屋の中で..